だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

試合中のアシスタントコーチで学んだこと

今回は、獣医とは違う話題でバスケの話でアシスタントコーチについてです。

2023年9月10日 リーグ戦 2試合。

1試合目 37 vs 26

2試合目 60 vs 57

この2試合でアシスタントコーチを務め、ヘッドコーチから多くを教えていただ来ました。

最も印象的だったのが、ディフェンスを頑張れるかで試合の流れが一変すること。

そのために、ヘッドコーチは具体的に(具体的過ぎる内容は時間的にも説明できない)どうすれば良いか説明、指示を出されていました。

自分のマークに専念・離さない・最後まで粘る、リバウンドを頑張ることでした。

子供たちも、ヘッドコーチの声掛けで変わっていくのが明らかでした。

第4ピリオドで10点差ありましたが、わずかでも点差が縮まると、気持ちがより出てきて、ゲーム終盤で疲れているはずなのに動きはさらに良くなっていく姿が印象的でした。

きっかけを作る、ことができる声掛けの大事さを学びました。

その他にも多くを教えていただきました。

  • メンバーの決め方は、1と2ピリオドは相手も状況がまだ把握できていないため、少し賭けになってしまう。10人は必ず出場するためにメンバーを構成。キャプテンは1ピリオドは必ず出る。開始時のマークはまずは身長で決め、流れをみて、ディフェンスが強い味方を相手の上手い人につける。特に相手の4~6番。3ピリオドは試合がかなり決まる可能性が高いので当日のベストメンバーで、マークマンは1~2ピリオドの相手をみて決める。4ピリオドは流れと点差次第で、メンバーを編成。
  • タイムアウトは、1ピリオドごとに1回まで。タイムアウト前後で流れが本当に変わるのを体感した。周りが見えていない状況を、一度落ち着かせることができる。
  • リバウンドが試合を左右するのが明らかだった。特にディフェンスリバウンドが取れないと苦しい。子供たちをみていると、技術もいくらか必要だが、取りたいという、気持ち・メンタル次第で本当に違った。
  • カバーリングも大切だが、まずは自分のマークを。1対1で最後までついていく。両手を広げ、ボールマンと自分のマークを指させる場所でポジショニング。早すぎるカバーリングは注意される。その場合コーチはすぐに指示し対応しなければならない。
  • 攻撃時、一人は真ん中でポストプレーで、二人はサイドに大きく開き、スペースを作る。ポストしてワンツーでも良いが、お互い自分でドライブ行って良い。
  • ボールをもらうため、味方に自分の位置を教えるため、声を出して呼ぶ。ボールマンよりも見えているため。
  • 派手なプレーよりもシンプルに。
  • 負けているときは、点差を埋めるためにも、チームの得点源である選手で攻撃を主体にする。
  • ボールを持っていない相手をマークで追いかけ近くにいるときに、手を伸ばして触り過ぎるとプッシングに見えてしまい、ファウルを取られる可能性がある。肘を曲げ、手を挙げるもしくは肘を曲げ脇を絞る。
  • 交代でベンチに下げるとき、「ここが良くないから交代させた」とは言わない。基本、選手は代わりたくないと思っている。良かった点をまず伝え、一度外から試合を見て、周りを見渡し気持ちを落ち着かせて、ここを変えていこうか、このようなプレーをしていこう」と話をする。
  • 女子は、男子以上に褒める回数を増やしいる。

「勉強」と「研究」の違い・関係性

臨床獣医師の仕事を一言で、と言われた場合、自分は「農家さんで起きている問題を解決すること」と答えています。治療、予防、生産獣医療等も全て含みます。

農家さんの経営を良くすること、農業に貢献することも私たち臨床獣医師の仕事ではあると思いますが、自分は、農家さんを儲けさせよう、農業に貢献したいとは第一に考えていなくて、農家さんで起きている(もしくは起きるかもしれない)問題、つまり、マイナス要素、不安要素を解決して、農家さんが心理的安全性を少しでも手に入れられることを第一に考え、仕事を続けてきました。不安な点が減り、心理的安全性が少しでも持てれば、農家さん自身で一歩踏み出しやすくなると考えるからです。

若手獣医師だったころです。ある農家のお母さんが話されていました。

下痢で点液している子牛がいて、「明日朝生きているだろうか?と思ってばかりで、夜も寝れなかった」と。

この話を聞いた時、やっぱり少しでも不安要素を無くし安心して畜産や酪農を営んでいただくことが大切なんだ、そのために自分ができることをしようと思いました。

安心できれば人間は勇気を持ちやすく、先に進めることに繋がると思います。

スラムダンクを例にすると、桜木花道がオフェンスリバウンドを取ってくれると信じているから、安心して三井寿スリーポイントをガンガン打てる

キャプテン翼だと、キーパーの若林源三が後ろで守ってくれるから、翼たちが攻撃に専念できる

という感覚に近いかなと思います(古い例えかつマンガで申し訳ございません)

だから、臨床獣医師は、農家さんに安心を少しでも持ってもらえるように、日々考えて行動することが大切かなと、自分は思っています。

ここからが今日の本題ですが、では農家さんの問題を解決する、安心してもらうためにはどう行動したら良いのでしょうか?

農場で起きている問題を見つけ、それについてまずは情報を探します。調べるための方法は、先輩、同僚に訊いたり、教科書、文献、論文、ネットなどを利用しますが、これらの行動は「勉強」と捉えると思います。現時点で分かっている情報を調べ、自分の中で整理することだと思います。この「勉強」で知って理解でき、実践できる程度であれば、それで農家さんの問題を解決でき、臨床獣医師としての役割を果たすことができます。

しかしながら、いくら訊いたり、教科書や論文で調べたりするといった「勉強」をしても現時点ではまだわかっていない、つまり、今のままでは農家さんの悩みや希望に応えられないことが実際の臨床現場には数多く存在するのは多くの臨床獣医師が感じたことがあると思います。この時に、臨床獣医師が行う「研究」が始まると自分は考えます。つまり「研究」とは、先人が積み上げてくれた獣医療を元にして、既知の領域をさらに広げ、自分を含め、多くの臨床獣医師が勉強できる環境・材料を創ること、であると自分は考えます。

なので、決してとんでもないことを研究する必要なんてありません。

農家さんで起きている問題(不安要素)に対応していくと、「勉強」だけでは解決できないことが出てきて、自然と「研究」が始まる、というのが、勉強と研究の違い、というよりも関係性だと自分は思います。臨床獣医師の仕事は、この流れの連発ではないかと、自分は思います。

「何か研究したい」「何か強みをもちたい」「自分のやりたいことをやりたい」という気持ちを若いうちから持っていることは素晴らしいですが、最初はそのような気持ちは封印し、「今、何が農家さんや牛で問題となっているのか」「この診療所で自分は何を求められているのか」を意識し、その解決に全力投球(勉強)していけば、自然と「研究したいこと」「自分の強み」「やりたいこと」がみつかる、舞い降りてくる、と自分は思います。

臨床獣医師の先生方は確かなリスペクトされるお考えを皆さまそれぞれお持ちです。今回は、あくまで一人の臨床獣医師としての自分の考えであることをご了承ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。

獣医大学生で行ったNOSAI実習

自分がNOSAI実習を希望して行ったのは、大学5年の夏休みでした。将来は馬の獣医療に進みたいと思い就職を考えてのことで、大学の掲示板にNOSAI実習の存在を知り行ってみようと思いました。そもそもNOSAI実習は初めてで、NOSAIという組織自体も知らなかったです。

実習をお願いした診療所は、馬の手術を主とする診療施設で、馬の繁殖シーズンを過ぎた比較的診療が少ないはずの夏休みでしたが、朝から晩まで日によっては深夜から朝になるまで手術をされている日があり非常に忙しい様子でしたが、先生方は全てのことに対応して本当にスーパーマンに見え、馬の獣医は格好いいな、と思いました。自分以外にも3人の学生がいて、一緒に2週間共同生活を行いました。この2週間の間に、診療所の先生方の獣医療に対する姿勢や気持ちなどを側で見たり、教えていただいたり、色々話しをさせていただく中で、早くこの先生方みたいになってこの世界で働きたい!という思いが大学生の自分の中でどんどん膨らんできたのを覚えています。と言いながらも、手術の助手中にあまりにも眠くて寝てしまったことがありましたが・・・。

そのような気持ちが高まっていた時に、有難いことに1次診療の現場(往診を主体とする診療所)も拝見することができるとのことで、研修生の一人がバイクを持っていたので、後ろに乗せてもらい45分かけて隣の診療所に向かいました。

その診療所では、先生が2人待ってくださっていました。一人は、牛を診るプロフェッショナルな先生で、もう一人が牛も馬も診るプロフェッショナルな先生でした。「馬どうしても見たいんだ、いいかな」とわがままを言ったら了承してくれて、自分が馬と牛の両方を診ている先生の助手席に乗る機会をいただきました。

人生の分岐点がここでした!

この先生が、自分の獣医人生に多大な影響を与えてくださいました(と自分が勝手に思っているだけですが)。

往診先では、農家さんと先生がお互いに信頼し合っている様子、先生がしっかり農家さんの目を見て話を聴く姿勢、困っているところにアプローチする姿勢、非常に忙しいのに焦っている様子を見せない、など、なんだこの方は!と思いました。

そして、車に乗って移動している最中です。

「上野君、獣医師にとって大事なこと知っているかい?」と話されました。

「大事なことは、獣医師は技術者だから、動物を治す獣医療技術を高めるために努力し続けるんだ。そして、獣医師は科学者だ。これまでの先人の獣医師の先生方が積み上げてくれたおかげで自分たちは獣医療を行うことができている、だから、自分たちも現在の獣医療の歴史に上乗せし続けるため研究し科学し続けるんだ。もう一つがコミュニケーションだ。いくら技術があっても、農家さんとの信頼関係がなければ発揮する機会がない。農家さんとのコミュニケーションを大事にすることで、農家さんで起きている問題にアプローチし、解決するために勉強したり、研究したりすることにつながる。信頼関係が技術向上や科学する土台になる。この3つが大事なんだ」

・・・・・・・・・こ、この先生は、か、神だ!!!

と当時の自分は衝撃を受け、しばらく興奮が止まらなかったのを覚えています。

この診療所がその日たまたま研修生を受け入れてくださったこと、バイクの後ろに乗れたこと、その先生の助手席に乗せてもらえたこと(もう一人の先生も入社後同じ診療所で、農家さんとの柔らかい対応の仕方、農家さんからの絶大な信頼を得られている、など本当に素晴らしい先生で、特に牛の手術にいつも立ち会ってくれて多くを教えていただきました)

自分は運がかなり良い方とは思っていましたが、ここまで御縁をいただくのは正直あり得ないことの連発でした。

2週間の研修が終わり、夏休みから秋にかけてしばらくは現実に戻りスロットとパチンコの日常が再開されました。

そんな日常の中で、色々就職を考えました。そして自分がたどり着いた結論が、「人」で決めることでした。その会社が何をしている会社なのか、その会社の魅力よりも、「なんとかして、あの先生の下で仕事がやりたい」という思いになりました。

そして、行動に出ました。半年後の3月の春休みに、もう一度、今度は直接、先生のところに行き、先生のお力で当時の組織の職員のトップである参事に挨拶に伺うチャンスをいただき、「どうしても入りたいんです」と伝えることができました。

お陰様で、運よく入社することができ、さらに幸運だったのが、自分が入社する時点がちょうどその診療所の所長が退官されるタイミングで入れ替わる形となり、その先生の下で仕事ができるという、本当に恐ろしい程恵まれ過ぎている自分でした。

しかしながら、自分は、前所長の伝統ある診療車をたった1か月で壊してしまうという、恩を仇で返す行為をしてしまいました。

と、このような感じのNOSAI実習の思い出が自分はあります。

NOSAI実習は、日本全国で行われています。自分の経験ではありますが、大学生のうちに、「時間」と「お金」と「熱意」がある限り、いろいろな診療所に行って色々な獣医師と出逢えば、大学の日常では得ることが難しい何かが見えたり得ることができるかもしれません。

人それぞれ感じ方は違いますが、自分はそのように思っています。

産業動物獣医師を目指される方は特にですが、産業動物獣医師に興味のある方だけでなく、将来に悩んでいる方などは、大学をちょっと出て、現場の臨床獣医師と一緒に、人との繋がりや獣医療を体験してみませんか?

全国のNOSAI 産業動物臨床 獣医学生応援プロジェクト

北海道NOSAI 家畜診療業務体験研修 | 採用情報 | NOSAI北海道(北海道農業共済組合) – NOSAI北海道(北海道農業共済組合)

適性検査を受検! プラクティショナー(実践家、実務家)と診断された

適性検査ミキワメ(https://mikiwame.com/)を受検しました。

ミキワメは、人の「性格」と「心の幸福度(ウェルビーイング)」を可視化するアルゴリズムのことです。

性格診断は4つの軸の大小関係によって分類され、各タイプの強みが分かるようになっていました。

4つの軸とは、

1、主導-受容

2、楽観-慎重

3、進歩-保守

4、親和-独立

性格診断のタイプは大きく4つに分類され、その中からさらに4つに分類されていました。大きく4つは、サポート人材、ドライブ人材、アレンジ人材、コンサル人材です。

 

そして、自分の性格診断の結果は、、、

 

アレンジ人材の中の、ラクティショナー(実践家、実務家)でした。

このタイプの人は、慎重に状況を見極め、堅実に調整する人材。細かな配慮や気の利いた行動で仲間を支えます。後ろ向きで受け身とみられることも。と記載されていました。

また、自分の適性に関してもコメントがありました。

意欲の特徴として、自分の興味関心と取り組む内容が合致していることでモチベートされる傾向があります。また、新しい物事に触れられるような、変化に富んでいる環境で力を発揮しやすい一方、変化の少ない環境では物足りなさを感じることがあります。ストレスに対する感情面の傾向として、自分が精神的に辛い状況でも、周りへの影響を考えた感情表現ができますが、ストレスを溜めてしまうことがあります。リーダーシップの特徴としては、合理的に問題解決を目指すよりも、まずはメンバーの気持ちに配慮することを優先するタイプです。問題発生時の傾向として、問題の原因が自分にあると感じ、自分事として解決に取り組もうとします。そして、問題解決にあたっては、独力で解決しようとする傾向があります。

とのことでした。

今回の結果を妻に診てもらうと、当てはまる点、そうでない点があるが、だいたいはそうだね、とのこと。

自分としても、他の性格タイプや適性を比較すると、ラクティショナーは完全に一致するわけではないですが、大きくは外れていなかったです。

全く突拍子な結果にならなかったので、自分のことはある程度理解できているのかなと思いました。

ラクティショナーは自分の強みであるかもしれないので、1つの参考にして今後に生かしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

20000PV(ページビュー)達成の感謝

お陰様で、私のブログのPV(ページビュー)が20000回に達しました!!!

ここまで続けてこれたのも、ひとえに不定期でかつ一回あたりの文章が長すぎる私のブログを時間を使って読んでくださっている読者の皆様のおかげです。

ありがとうございます!!!

そこで、今回はこのブログのこれまでの流れと記事について少し説明いたします。

2021年12月1日にブログを開始。

2022年11月5日に、10000PV達成。

2023年7月8日に、20000PV達成。

こんなにも多く読んでいただき、本当に感謝の気持ちで一杯です。

そこで、この期間中(8か月間)にどのような記事を読んでくださっているのか、ランキング形式で並べてみたいと思いました。

まず最も読んでいただいたブログ記事は・・・・・

daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com

第2位は・・・・・

daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com

第3位は・・・・・

daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com

以下4位~10位までを並べます。

4位 お世話になった酪農家さんが酪農業を引退します - だいさく NOSAI獣医日記

5位 人工授精時の排卵促進剤は、受胎率を高めることができるのか? - だいさく NOSAI獣医日記

6位 発情周期のステージ推測③ 超音波検査を用いて卵胞ウェーブと子宮を診る - だいさく NOSAI獣医日記

7位 兄貴が日本サッカー協会指導者ライセンスB級取得! - だいさく NOSAI獣医日記

8位 クロストリジウム感染症とミルク濃度(浸透圧)の関係 - だいさく NOSAI獣医日記

9位 受胎率向上のための改良定時授精プログラム(文献紹介) - だいさく NOSAI獣医日記

10位 基本のレベルを高める(直腸検査) - だいさく NOSAI獣医日記

繁殖に関してのブログ記事が多く、その中でもPG-PG-GnRHショートシンクは自分が数年かけての研究データであり、それを多くの方々に読んでいただけたことは、本当にうれしいです。

これからも少しでも皆様のお役に立てるお話をこのブログでご紹介していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

再現性の高い基本の必勝パターンを持つ

先日、後輩に馬の直腸検査を教えている最中に、「再現性」という言葉がでてきたので、「再現性」について記しておこうと思いました。

獣医療は勝ち負けではないですが、簡単に言えば、必勝パターンを持つことです。

この状況が揃えば、この流れであれば、限りなく高い確率で成功する。

具体的には、

馬の直腸検査を行う時の基本的な手順・流れです。多くの獣医師がこの手順で行っていると思います(もしも自分だけだったら申し訳ございません)。

①まず直腸内の糞便をしっかりと掻き出す。

②終わったら、手を奥まで挿入しショベルカーのようにやや下向きに手を引き戻し、子宮のど真ん中を包み込む。

③そこから左もしくは右の子宮角をそのまま包み込むように進み、進んだ方の卵巣を触診する。私の場合は触りやすい左から始めます。

④触診が終わったら、そのまま子宮角から真ん中に包み込むように戻り、逆の子宮角へ進み、もう一つの卵巣を触診する。

⑤また子宮角から真ん中に戻り、子宮頸管、子宮外口を触診し、直腸検査を終了する、

という流れが基本的です。

この基本の流れを最初は大事にすることが大切だと思います。最初はこれが必勝パターンになると自分は思っています。

直腸検査が終わった後、「上手くいったのは何が要因だった?」「上手くいかなかったのはどのような問題だと思う?」と訊いて本人に話してもらいフィードバックするようにしています。

今回、上手くいかなかったときに、その原因を訊いてみると、いつも同じ流れで触診せず、触れたところからスタートしていることが分かりました。

その場合だと、手順の中で今回どこが上手くいかなかったのか?その原因を探るにも、いつも様々なやり方をしていては解明するのが遅く難しくなると自分は思います。

毎回毎回同じ基本のやり方をしていたら、自分が「この手順番号の時に苦労することが多い」ということが分かるようになり、その問題をクリアすることに集中できます。そして、問題をクリアするとかなり自信がもてるようになり、上達するのが早いと感じます。

賛否両論だと思いますが、「たまたまできた」、という奇跡的な手技は教え始めた本当の最初の最初の数回くらいのビギナーは良いですが、少し経験を積んだ場合は、正直必要ないと自分は思っています。その場しのぎでは、上達が遅く貢献できないと思っています。

また、たくさん経験したからできるようになった、というのも考えてみれば理由があるはずだと思います。

たくさん経験する中で、できたできないを体感し、できた理由・状況とできなかった理由・状況を考え明確にすることを続けてきたので限りなく確率が高い再現性のある技術になったと思います。

特に獣医師ならだれでもぶち当たる静脈内注射はそうだったのではないかと自分は思います。

さらに、だれかに教えるにあたっては言葉でそれを伝える必要もあるので、言語化できることも非常に大切です。

科学論文も、それを読んで準備すればだれだってできるという再現性がないといけません。

だれでもできる再現性の高い基本の必勝パターンを持つという考えを持って実行することが大切と後輩に伝えました。

しかしながら、ここまでは基本の習得の話ですが、さらに大事なことがあります。

自分自身の中で、再現性をもたせることができる必勝パターンを作ることが重要になってきます。

それは、ある程度基本が身につくと、その再現性のための必勝パターンはみな違ってくるということです。診療所に10人いたら10人少しずつ異なっているのが正直現実です。

覚えるには最初は基本的な流れが最も大切で、基本が全てだと思いますが、その基本を習得しさらに発展するためには、自分にあった再現性のある必勝パターンを作ることが大切だと感じます。

静脈内注射も最初は基本的なやり方を先輩から教えてもらったと思いますが、経験を積んでいくと徐々に自分(の体格、その時の場面にあった考え方)にあったやり方に少しずつ変わっていき、本人の必勝パターンを持ったと思います。

過信や押し付けは良くないですが、必勝パターンの再現性を高められると自信につながります。

今回のお話のまとめです

成功体験は自信につながる。

成功体験を再現できる必勝パターンを自分で考え創り出す。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

「教え方」について、今一度勉強してみました。

最近、「教え方」について色々考える機会があり、本を読んで勉強してみました。

自分の教え方は果たしてどうなのか・・・とちょっと不安になったからです。

その不安を少しでも解決したく手に取ったのが、「オトナ相手の教え方」(著者:関根雅泰さん、発行:株式会社クロスメディア・パブリッシング)です。

読んでみたところ、正直難しい話ではないのですが、じゃ本当に実践できているかとなると自分はできていないなと感じました。

この本で「教える」ことの本質は、次の2つが示されていました。

① 相手の立場に立つ

② 学習の手助け

当たり前では???と思われた方が多いと思われますが、実際にその姿勢でできているかは、自分はまだまだ不十分だと感じました。

まず①の相手の立場に立つについてです。

教え上手な人の教え方は、相手本位であり、教え下手は人は、自分本位(教えたい気持ちが強く、無意識に自分本位なってしまってることがほとんど、悪気はないことが多い)であると示されていました。

また、実際に教えるとなると、自分を含め多くの獣医師は診療所の先輩獣医師から教えてもらったやり方をそのまま後輩教育に利用しているか、または自分が教えてもらったやり方に上乗せして+αのやり方をやっているのが実情ではないかと思います。しかし、この本を読んで大事なポイントを知ることができました。

大事なのは、教える前に相手の現状のレベルを確認することです。

つまり、どのくらい知識と技術があり、どのくらいのことができるのか?

そして、これら3つについて、①言葉、②文字、③行動で示してもらい、現状を把握することが大切であることを知りました。

相手の現状のレベルを把握した後には、目標のレベルを検討に移ります。

教える目的は、「現状と目標の差を埋めること」であり、その目標である知識、技術、態度の3要素がそれぞれこのようになってほしいという状態を検討します。

・知識:~を説明できる状態

・技術:~ができる状態

・態度:~をするようになる状態、~をしなくなる状態

例えば、

知識として、牛の病気について農家さんに説明できるようになった。

技術として、牛の病名を絞れるようになり診断がよりできるようになった。

態度として、農家さんに挨拶できるようになった。農家さんの困っているところに寄り添うことができるようになった。

この流れを考えずに、一方的に教える側の持っている知識、技術を教えようとするため、目標となる状態が定まりません。そうなると、達成できたのかできなかったのかも感じることができないので、教わる本人が成長している感じを少し得られにくい可能性がでてきてしまうと思いました。

次は、②の学習の手助けについて、次の2点が個人的には勉強になりました。

1. 獲得

2. 変化

診療技術や知識を教えたり、教科書や文献、雑誌を紹介して本人ができなかったことができるようになるのは獲得になり、これは自分もやっているつもりで理解できるのですが、最も難しいのは、2の変化させること!が身に沁みました。

相手の言動・態度が変わって、はじめて教えたことになる!とのことです。たしかに、言っただけでは変わらないことは多くの獣医師が感じていると思います。変わらないのは言われた本人が変わろうとしないから、と思っている獣医師も私を含めいると思います。

しかしここで、教えるにあたって大事な要素を本書は教えてくれました。

まず1の獲得について大事なことは、以下の3つです。

① コップの大きさ

② 小分けにして入れる

③ 理解度の確認

①「コップの大きさ」とは、説明する前に現状のレベルを把握することです。どの程度の知識、技術レベルなのかを知ることです。

②「小分けにして入れる」とは、持っている情報を全て伝えないことと記されています。これは、自分も教わる時に頭がパンクしてしまった経験があります。いったん話についていけなくなると、それ以上はもう頭に入らなくなってしまい、教わった内容そのものが理解できない状態に陥ってしまったことがあります。逆にいうと、教えた側は教えたつもりになってしまっているということです。相手に伝わるかが、重要なので、コップに入る程度に小分けに教えることは本当に大事だなと強く思います。

③「理解度の確認」とは、上手な伝え方は伝えて終わりではないということです。どのくらい伝わっているのかを説明の直後に、言葉にしてもらったり、文字にしてもらったり、行動で示してもらうことが大事であるとのことです。

また、獣医療のような技術に関しては、やってみせることも大事であり、やってみせる際には、どこを見てほしいか事前に伝えてから、やってみせること、そして、やらせる際には、やらせた直後にフィードバックを行うこと、が大事でやっていきたいと思い、現在進行中です。

ここで、アドバイスとフィードバックの違いについて説明を加えます。

アドバイス:発生した事実に対して、意見・助言を言うこと。(短期的に有効だが主体性はやや育まれにくい)

フィードバック:発生した事実を伝え、「ではどうすれば良い?」を質問し、相手本人に自分で考えさせること(長期的には主体性が育まれやすく有効)

両方を上手くバランス良く取り入れればより有効な学習の支援ができると思います。

次に2の変化についてです。

これは個人的に上手くできていない実感が強い大事な点でした。相手の言動・姿勢を変えてほしい時には、3つの流れがあること。まずは「良い点」を具体的に伝え、その次に改善してほしい点を伝える。この時も、この悪い言動に対しての本人の考えや意見をしっかりと聴き、その上で、こちらの考えを伝えることが重要とのことです。さらに、この時にWhyを絡めるとより伝わりやすくなります。最後に、もう一度相手に今後どのような言動を取ろうと考えているのか問い、本人に言わせる。この時に、「間」をしっかり取り、こちらの言動を挟まないように我慢すること。この3つの流れが大切であることを教わりました。

しかし、教えることの最も大切なことは、その土台作りです。同じ内容を伝えるにも、だれが伝えるのかで意味合いは変わります

この3つの流れが上手くいくためには、教える側がそれに値する人格や能力を持っていることが大切であると自分は肌で感じてきました。なので、そのような信頼関係を常日頃から作るように動いて努力することは大事だと思います。

このように、教え方について勉強できる本でしたが、本書でも示されていますように、担当者一人だけで行うのではなく、周囲を巻き込むことが大事であることは、自分も強く思います。

本書では、職場の見える化「人脈マップ」を作ることとありましたが、これは数年前に近隣の3診療所の全獣医師にお願いして、作ったことがありました。それぞれの強みなどを表にまとめてその当時は全員に配布したところ、連絡が来たり、逆に質問したりして、効果があった経験があります。新人獣医師が担当者以外の様々な獣医師に訊ける環境を教える側が作ってあげることが大切だと感じます。

科学的にも、新人に教える担当者が周囲の「協力」を求める行動そのものが、新人の能力向上につながっていることが明らかにされています。

知りたい情報を誰が持っているかを、教える側が「知っている」ことが、組織を成り立たせる上で大事と記されていますが、これは有難いことに、自分はちょうど家畜診療の編集委員を担当していることもあり、様々な獣医や畜産の雑誌に目を通したりすることはルーチンワークであり、また大学の先生とこれまで養ってきた人脈、SNSなどを通して知り合った獣医師など、それなりに色々な先生と知り合うことがお陰様でできてきたと勝手に思っています。なので、人脈マップを色々な組織・規模で作成するのは非常に良い効果があるのではと思います。

ただ注意点も指摘されていました。複数で教える場合は、「混乱」に注意とのことです。色々な人が指導に絡むと人によって言うことが違ってくるという本当によくある問題です。この混乱を防ぐためには、新人にどうなってほしいのか、数か月後、1年後の到達目標は何かということを皆で共有をしておくこととのことです。これについては、できれば貼りだして見える化しておくことが大事だと、以前診療所内で話をしたことがありました。

ここでよくやってしまう注意点があります。その目標に到達するまでのやり方に関しては、教える人それぞれに委ねることです(ここは触らない)。その方が1つのやり方だけでなく、他のやり方も学ぶ機会になるからです。そして、教える側も自分のやり方でないからと言ってその点について文句を言ったり、細かく指摘しないことが大切だと感じます。教える側も、他の獣医師のやり方を知るきっかけにもなります。そして、新人や若い獣医師には教わった中から自分(の考えや体格)に合っている、やってみたいと思うものを自分で選択し、まずはやってもらうように心がけています。そうしないと教わる新人は混乱してしまいますので。

今回、「教え方」について今一度勉強したく、「オトナ相手の教え方」を読んでみました。賛否両論あると思いますが、教え方で悩んでいらっしゃる獣医師の先生方の参考に少しでもなれば幸いです。

長い文章を最後までお読みいただきありがとうございます。

仕事のやりがいとワークライフエンリッチメント

この1か月、娘たちがバスケットボールを通して少しずつ成功体験を得ることが増えてきて、やりがいを感じている姿を目にします。

そこで、「やりがい」ってなんだろう、例えば「仕事のやりがい」ってなんだろうと頭をよぎりました。

結局、人それぞれやりがいは違うなと思います。

でも、そもそも「やりがい」とは、を広辞苑で調べてみると、漢字では遣り甲斐と書き、意味は「するだけの値うち」と記載されていました。

論文も調べてみました。

これまでに報告された論文の中で、個人的にすごくしっくりきた論文がありました。

1976年と約50年前の論文ですが、ここではやりがいを感じる仕事として5つ提示されていました。

Hackman, JR and Oldham, GR. Motivation through the Design of Work: Test of a Theory ORGANIZATIONAL BEHAVIOR AND HUMAN PERFORMANCE 16, 250-279 (1976)

その5つとは、

① Skill Variety 

仕事を遂行する上で、その人の持つ様々なスキルや能力を駆使した様々な活動が必要とされる(多様性

② Task Identity 

目に見える結果を伴う仕事を最初から最後まで関われる(完結性

③ Task Significance 

周囲の人々の生活または仕事に良い影響を与える(有意義性

④ Autonomy 

その仕事が個人に実質的な自由、独立、裁量が与えられている(自律性

⑤ Feedback 

自分のパフォーマンスの有効性について他者から明確な情報を得られる(評価

 

特に、4と5が充実すると、やりがいが非常に高まる、と報告されています。

今の自分を考えてみると、

①はOK

②はOK

③はたぶんOK

④はまあまあOK

⑤もまあまあOK(有り難いことに、自分の言動に対して指摘してくれる先輩方がいます)

と感じます。

 

みなさんはどうでしょうか?

 

人それぞれ仕事や私生活の考え方は違いますが、ワークライフエンリッチメントという概念から考えると、仕事でやりがいを感じることは、ライフの面の私生活にも良い影響を与えると思いますので、このような考えを大事に考える人たちに対してその環境を作れるように努めたいです。

僕のヴェットアカデミア様に取材していただきました(Youtube動画3本)

約1年前に、「獣医学生が運営する獣医情報メディア」としてご活躍されている僕のヴェットアカデミア様に取材していただきました。

seakvetlabo.com

獣医師を志す小中高生への情報提供、獣医大学生への情報提供、実際の獣医師へのインタビューなどを行い、世の中の獣医業界の実情を集めて発信してくださっています。

今回、その時の対談動画を3回に分けてYoutubeに掲載いただきました。

獣医師にちょっとでも興味のある小中高生の方々、大学生の方々が、今後の進路や就職を決めることに少しでも参考になれば幸いです。

動画で説明している内容は以下の流れです。

①なぜこの会社で大動物獣医師をやりたいと決めたのか

NOSAIでの仕事内容ややりがい

NOSAIで働きながら大学院に進学した理由

最初に、なぜこの会社で大動物獣医師をやりたいと決めたのかについて説明している動画です。

www.youtube.com

次に、NOSAIでの仕事内容ややりがいについて説明している動画です。

www.youtube.com

最後に、NOSAIで働きながら大学院に進学した理由について説明している動画です。

www.youtube.com

 

基本のレベルを高める(直腸検査)

この1か月、もうすぐ2年目になる後輩が馬の直腸検査を習得したい、ということで朝一緒に馬の牧場に往診に向かっています。彼は、朝寝坊せず、10分前には着いて準備しています。休みの日も朝だけは直腸検査をしにくる、という意気込み。

3月中に、子宮と卵巣を触診し、エコーで子宮と卵巣を当れるようになりたい、という目標を持って相談されました。

1か月ですぐにできる訳ではないし、自分もすごい直腸検査の技術を持っている訳ではないし、教えることが上手い訳でもないです。

しかし、直腸検査をするチャンスを与えることだけはしたい、という思いは先輩から受け継いできました。牧場に協力していただき、1か月で150~180頭くらい手を入れることができそうな予定です。

でも、これと言って特別なことを教えることはなく、

①安全第一

②馬と人のポジショニング

③声掛け

④直検ゼリーを肛門に塗布

⑤直腸に手を挿入しぼろ出し(便とり)

⑥子宮と卵巣を自分のテリトリーに包み込む(手前に持ってくる感じ)

⑦エコーの当て方

などです。

これと言って、特別なことはない、基本の流れです。

しかし、その基本のレベルを高めることが本当に大事であることを、伝えました。

例えば、④の直検ゼリー。

直検ゼリー???と思われるかもしれませんが、特に寒い時期は温めておくという準備が重要です。冷たいゼリーは馬も少し嫌がるし、滑りもちょっと落ちます。温めておくと、馬がより安心し滑りも良く、直腸検査がやりやすくなります。安全第一につながります。直腸検査をする前から始まっている、準備が大切、と伝えました。

ここまでは、ちょっとした余談です。

もっともお話したい基本技術が「ぼろ出し」です。

だれでもできる「ぼろ出し」ですが、これがどの高さのレベルでルーチンにできているのかが、非常に大事だと自分は思い続けています。

ぼろ出しは、決して高度獣医療技術でもなく、応用技術でもなく、基本中の基本技術です。しかし、これが高いレベルで行うことができれば、子宮や卵巣を自分の自由なテリトリーに包み込みやすく、子宮や卵巣の触診がスピーデイ・正確性・直腸を傷つけにくい、という良いこと尽くしで、当然その次のエコー検査も同様です。

スピードがでれば、馬もじっとしている時間を短縮でき、関わる人馬の安全性も得られます。

ぼろ出しを、ぼろを出すことを目的とするのではなく、スピーデイかつ正確に診断するための手段と捉えることが大事だと思います。

ボロがあと一個とれればもっとやりやすいのになあ、という場面はしょっちゅうあります。これをとることが大事ですが、基本をおざなりにし、なんとか子宮や卵巣が触れるから大丈夫と思って続けていると、より時間がかかり直腸壁を傷つけるリスクも高まりますので、やはり様々な場面でぼろ出しを確実に行えることができる基本技術は大切です。

プロサッカーの世界でも、難しいプレーをせず、ボールを止めたいところに確実に止める、正確なパスを送る、という基本技術を限りなく高めに高めたのが、メッシやシャビやイニエスタを要して世界を制覇した時のバルセロナというクラブでした。

馬の直腸検査のこの道40年のスペシャルな先生も、今でも、ボロだしと子宮を手前に持ってくる、ということをを愚直に実践している、とのことです。

色々なことに手を出すことも大切ですが、ちょっと今一度考えたいと思います。

基本なくして応用はないと思います。基本が伴っていなければ、伸び悩む獣医人生になる可能性が高まるのではと自分は思います。

なので、やったことがある➔できる、という程度ではなく、基本だけどできるレベルをとことん高めることは、本当に大事であることを後輩に伝わっていたらいいなと思います。

自分への戒めとして、自分も後輩に伝えながら、改めて基本を大事にしていきたいと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございます。