だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

再現性の高い基本の必勝パターンを持つ

先日、後輩に馬の直腸検査を教えている最中に、「再現性」という言葉がでてきたので、「再現性」について記しておこうと思いました。

獣医療は勝ち負けではないですが、簡単に言えば、必勝パターンを持つことです。

この状況が揃えば、この流れであれば、限りなく高い確率で成功する。

具体的には、

馬の直腸検査を行う時の基本的な手順・流れです。多くの獣医師がこの手順で行っていると思います(もしも自分だけだったら申し訳ございません)。

①まず直腸内の糞便をしっかりと掻き出す。

②終わったら、手を奥まで挿入しショベルカーのようにやや下向きに手を引き戻し、子宮のど真ん中を包み込む。

③そこから左もしくは右の子宮角をそのまま包み込むように進み、進んだ方の卵巣を触診する。私の場合は触りやすい左から始めます。

④触診が終わったら、そのまま子宮角から真ん中に包み込むように戻り、逆の子宮角へ進み、もう一つの卵巣を触診する。

⑤また子宮角から真ん中に戻り、子宮頸管、子宮外口を触診し、直腸検査を終了する、

という流れが基本的です。

この基本の流れを最初は大事にすることが大切だと思います。最初はこれが必勝パターンになると自分は思っています。

直腸検査が終わった後、「上手くいったのは何が要因だった?」「上手くいかなかったのはどのような問題だと思う?」と訊いて本人に話してもらいフィードバックするようにしています。

今回、上手くいかなかったときに、その原因を訊いてみると、いつも同じ流れで触診せず、触れたところからスタートしていることが分かりました。

その場合だと、手順の中で今回どこが上手くいかなかったのか?その原因を探るにも、いつも様々なやり方をしていては解明するのが遅く難しくなると自分は思います。

毎回毎回同じ基本のやり方をしていたら、自分が「この手順番号の時に苦労することが多い」ということが分かるようになり、その問題をクリアすることに集中できます。そして、問題をクリアするとかなり自信がもてるようになり、上達するのが早いと感じます。

賛否両論だと思いますが、「たまたまできた」、という奇跡的な手技は教え始めた本当の最初の最初の数回くらいのビギナーは良いですが、少し経験を積んだ場合は、正直必要ないと自分は思っています。その場しのぎでは、上達が遅く貢献できないと思っています。

また、たくさん経験したからできるようになった、というのも考えてみれば理由があるはずだと思います。

たくさん経験する中で、できたできないを体感し、できた理由・状況とできなかった理由・状況を考え明確にすることを続けてきたので限りなく確率が高い再現性のある技術になったと思います。

特に獣医師ならだれでもぶち当たる静脈内注射はそうだったのではないかと自分は思います。

さらに、だれかに教えるにあたっては言葉でそれを伝える必要もあるので、言語化できることも非常に大切です。

科学論文も、それを読んで準備すればだれだってできるという再現性がないといけません。

だれでもできる再現性の高い基本の必勝パターンを持つという考えを持って実行することが大切と後輩に伝えました。

しかしながら、ここまでは基本の習得の話ですが、さらに大事なことがあります。

自分自身の中で、再現性をもたせることができる必勝パターンを作ることが重要になってきます。

それは、ある程度基本が身につくと、その再現性のための必勝パターンはみな違ってくるということです。診療所に10人いたら10人少しずつ異なっているのが正直現実です。

覚えるには最初は基本的な流れが最も大切で、基本が全てだと思いますが、その基本を習得しさらに発展するためには、自分にあった再現性のある必勝パターンを作ることが大切だと感じます。

静脈内注射も最初は基本的なやり方を先輩から教えてもらったと思いますが、経験を積んでいくと徐々に自分(の体格、その時の場面にあった考え方)にあったやり方に少しずつ変わっていき、本人の必勝パターンを持ったと思います。

過信や押し付けは良くないですが、必勝パターンの再現性を高められると自信につながります。

今回のお話のまとめです

成功体験は自信につながる。

成功体験を再現できる必勝パターンを自分で考え創り出す。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。