だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

獣医大学生で行ったNOSAI実習

自分がNOSAI実習を希望して行ったのは、大学5年の夏休みでした。将来は馬の獣医療に進みたいと思い就職を考えてのことで、大学の掲示板にNOSAI実習の存在を知り行ってみようと思いました。そもそもNOSAI実習は初めてで、NOSAIという組織自体も知らなかったです。

実習をお願いした診療所は、馬の手術を主とする診療施設で、馬の繁殖シーズンを過ぎた比較的診療が少ないはずの夏休みでしたが、朝から晩まで日によっては深夜から朝になるまで手術をされている日があり非常に忙しい様子でしたが、先生方は全てのことに対応して本当にスーパーマンに見え、馬の獣医は格好いいな、と思いました。自分以外にも3人の学生がいて、一緒に2週間共同生活を行いました。この2週間の間に、診療所の先生方の獣医療に対する姿勢や気持ちなどを側で見たり、教えていただいたり、色々話しをさせていただく中で、早くこの先生方みたいになってこの世界で働きたい!という思いが大学生の自分の中でどんどん膨らんできたのを覚えています。と言いながらも、手術の助手中にあまりにも眠くて寝てしまったことがありましたが・・・。

そのような気持ちが高まっていた時に、有難いことに1次診療の現場(往診を主体とする診療所)も拝見することができるとのことで、研修生の一人がバイクを持っていたので、後ろに乗せてもらい45分かけて隣の診療所に向かいました。

その診療所では、先生が2人待ってくださっていました。一人は、牛を診るプロフェッショナルな先生で、もう一人が牛も馬も診るプロフェッショナルな先生でした。「馬どうしても見たいんだ、いいかな」とわがままを言ったら了承してくれて、自分が馬と牛の両方を診ている先生の助手席に乗る機会をいただきました。

人生の分岐点がここでした!

この先生が、自分の獣医人生に多大な影響を与えてくださいました(と自分が勝手に思っているだけですが)。

往診先では、農家さんと先生がお互いに信頼し合っている様子、先生がしっかり農家さんの目を見て話を聴く姿勢、困っているところにアプローチする姿勢、非常に忙しいのに焦っている様子を見せない、など、なんだこの方は!と思いました。

そして、車に乗って移動している最中です。

「上野君、獣医師にとって大事なこと知っているかい?」と話されました。

「大事なことは、獣医師は技術者だから、動物を治す獣医療技術を高めるために努力し続けるんだ。そして、獣医師は科学者だ。これまでの先人の獣医師の先生方が積み上げてくれたおかげで自分たちは獣医療を行うことができている、だから、自分たちも現在の獣医療の歴史に上乗せし続けるため研究し科学し続けるんだ。もう一つがコミュニケーションだ。いくら技術があっても、農家さんとの信頼関係がなければ発揮する機会がない。農家さんとのコミュニケーションを大事にすることで、農家さんで起きている問題にアプローチし、解決するために勉強したり、研究したりすることにつながる。信頼関係が技術向上や科学する土台になる。この3つが大事なんだ」

・・・・・・・・・こ、この先生は、か、神だ!!!

と当時の自分は衝撃を受け、しばらく興奮が止まらなかったのを覚えています。

この診療所がその日たまたま研修生を受け入れてくださったこと、バイクの後ろに乗れたこと、その先生の助手席に乗せてもらえたこと(もう一人の先生も入社後同じ診療所で、農家さんとの柔らかい対応の仕方、農家さんからの絶大な信頼を得られている、など本当に素晴らしい先生で、特に牛の手術にいつも立ち会ってくれて多くを教えていただきました)

自分は運がかなり良い方とは思っていましたが、ここまで御縁をいただくのは正直あり得ないことの連発でした。

2週間の研修が終わり、夏休みから秋にかけてしばらくは現実に戻りスロットとパチンコの日常が再開されました。

そんな日常の中で、色々就職を考えました。そして自分がたどり着いた結論が、「人」で決めることでした。その会社が何をしている会社なのか、その会社の魅力よりも、「なんとかして、あの先生の下で仕事がやりたい」という思いになりました。

そして、行動に出ました。半年後の3月の春休みに、もう一度、今度は直接、先生のところに行き、先生のお力で当時の組織の職員のトップである参事に挨拶に伺うチャンスをいただき、「どうしても入りたいんです」と伝えることができました。

お陰様で、運よく入社することができ、さらに幸運だったのが、自分が入社する時点がちょうどその診療所の所長が退官されるタイミングで入れ替わる形となり、その先生の下で仕事ができるという、本当に恐ろしい程恵まれ過ぎている自分でした。

しかしながら、自分は、前所長の伝統ある診療車をたった1か月で壊してしまうという、恩を仇で返す行為をしてしまいました。

と、このような感じのNOSAI実習の思い出が自分はあります。

NOSAI実習は、日本全国で行われています。自分の経験ではありますが、大学生のうちに、「時間」と「お金」と「熱意」がある限り、いろいろな診療所に行って色々な獣医師と出逢えば、大学の日常では得ることが難しい何かが見えたり得ることができるかもしれません。

人それぞれ感じ方は違いますが、自分はそのように思っています。

産業動物獣医師を目指される方は特にですが、産業動物獣医師に興味のある方だけでなく、将来に悩んでいる方などは、大学をちょっと出て、現場の臨床獣医師と一緒に、人との繋がりや獣医療を体験してみませんか?

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