だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

「勉強」と「研究」の違い・関係性

臨床獣医師の仕事を一言で、と言われた場合、自分は「農家さんで起きている問題を解決すること」と答えています。治療、予防、生産獣医療等も全て含みます。

農家さんの経営を良くすること、農業に貢献することも私たち臨床獣医師の仕事ではあると思いますが、自分は、農家さんを儲けさせよう、農業に貢献したいとは第一に考えていなくて、農家さんで起きている(もしくは起きるかもしれない)問題、つまり、マイナス要素、不安要素を解決して、農家さんが心理的安全性を少しでも手に入れられることを第一に考え、仕事を続けてきました。不安な点が減り、心理的安全性が少しでも持てれば、農家さん自身で一歩踏み出しやすくなると考えるからです。

若手獣医師だったころです。ある農家のお母さんが話されていました。

下痢で点液している子牛がいて、「明日朝生きているだろうか?と思ってばかりで、夜も寝れなかった」と。

この話を聞いた時、やっぱり少しでも不安要素を無くし安心して畜産や酪農を営んでいただくことが大切なんだ、そのために自分ができることをしようと思いました。

安心できれば人間は勇気を持ちやすく、先に進めることに繋がると思います。

スラムダンクを例にすると、桜木花道がオフェンスリバウンドを取ってくれると信じているから、安心して三井寿スリーポイントをガンガン打てる

キャプテン翼だと、キーパーの若林源三が後ろで守ってくれるから、翼たちが攻撃に専念できる

という感覚に近いかなと思います(古い例えかつマンガで申し訳ございません)

だから、臨床獣医師は、農家さんに安心を少しでも持ってもらえるように、日々考えて行動することが大切かなと、自分は思っています。

ここからが今日の本題ですが、では農家さんの問題を解決する、安心してもらうためにはどう行動したら良いのでしょうか?

農場で起きている問題を見つけ、それについてまずは情報を探します。調べるための方法は、先輩、同僚に訊いたり、教科書、文献、論文、ネットなどを利用しますが、これらの行動は「勉強」と捉えると思います。現時点で分かっている情報を調べ、自分の中で整理することだと思います。この「勉強」で知って理解でき、実践できる程度であれば、それで農家さんの問題を解決でき、臨床獣医師としての役割を果たすことができます。

しかしながら、いくら訊いたり、教科書や論文で調べたりするといった「勉強」をしても現時点ではまだわかっていない、つまり、今のままでは農家さんの悩みや希望に応えられないことが実際の臨床現場には数多く存在するのは多くの臨床獣医師が感じたことがあると思います。この時に、臨床獣医師が行う「研究」が始まると自分は考えます。つまり「研究」とは、先人が積み上げてくれた獣医療を元にして、既知の領域をさらに広げ、自分を含め、多くの臨床獣医師が勉強できる環境・材料を創ること、であると自分は考えます。

なので、決してとんでもないことを研究する必要なんてありません。

農家さんで起きている問題(不安要素)に対応していくと、「勉強」だけでは解決できないことが出てきて、自然と「研究」が始まる、というのが、勉強と研究の違い、というよりも関係性だと自分は思います。臨床獣医師の仕事は、この流れの連発ではないかと、自分は思います。

「何か研究したい」「何か強みをもちたい」「自分のやりたいことをやりたい」という気持ちを若いうちから持っていることは素晴らしいですが、最初はそのような気持ちは封印し、「今、何が農家さんや牛で問題となっているのか」「この診療所で自分は何を求められているのか」を意識し、その解決に全力投球(勉強)していけば、自然と「研究したいこと」「自分の強み」「やりたいこと」がみつかる、舞い降りてくる、と自分は思います。

臨床獣医師の先生方は確かなリスペクトされるお考えを皆さまそれぞれお持ちです。今回は、あくまで一人の臨床獣医師としての自分の考えであることをご了承ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。