だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

繁殖

PG-PG-GnRHショートシンク法の改善案

2年前に以下の記事を書きました。 daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com このPG-PG-GnRHショートシンク法は乳牛の繁殖管理において非常に有用な定時授精法と今でも思いますが、最近の文献を読んでいると、間違いがあることに気づかされ、もしかし…

自家産粗飼料は成分のバラツキが大きい

黒毛和種繁殖農場さんで、発情が来ない、受胎しにくい、受胎しても途中でいなくなる、などの繁殖障害で悩まれている農家さんの問題解決のため、まず現状把握するにあたって給与されている牧草成分の分析や代謝プロファイルテストを行うことがあります。 そこ…

子牛が娩出された時の後肢吊り下げは必要か?

呼吸を促進するために、生まれた子牛の頭を下にして吊るすという行為。 賛否両論あり様々な記事やホームページでこのことについて解説されていますが、科学的に検証した文献を示している記事を自分は未だ見たことがなく、勉強不足でした。 なので今回は、そ…

卵巣静止に子宮内膜炎が関与している

卵巣静止に子宮内膜炎が関与?! 分娩後発情がこない、妊娠していない場合に直腸検査や超音波検査を実施した結果、その牛が「卵巣静止」と診断したことは、ほとんどの牛の臨床獣医師は経験があると思います。 卵巣静止と診断し、多くの獣医師が行う治療は、G…

超音波検査を用いた卵胞嚢腫の診断(3㎜の考え方)

卵胞嚢腫は、卵巣静止、子宮内膜炎と並び牛の繁殖障害の代表格であることはご存じの方は多いと思われます。 また、卵巣にできる嚢腫は、卵胞嚢腫、黄体嚢腫、嚢腫様黄体とあり、基本的にはその大きい嚢腫が卵胞なのか黄体なのかを区別、診断した上でそれに応…

20000PV(ページビュー)達成の感謝

お陰様で、私のブログのPV(ページビュー)が20000回に達しました!!! ここまで続けてこれたのも、ひとえに不定期でかつ一回あたりの文章が長すぎる私のブログを時間を使って読んでくださっている読者の皆様のおかげです。 ありがとうございます!!! …

卵巣静止に対して排卵促進剤を用いて排卵させた直後の発情周期は短縮しやすい?

卵巣静止の牛に対して、コンセラールなどのGnRHを投与し排卵誘起し黄体を作る、という治療は牛の臨床獣医師の先生方は少なくても一度は経験があると思います。 さらに、治療した牛が、治療後10日ぐらいで発情が来た、という経験をされている方も多いのではと…

再現性の高い基本の必勝パターンを持つ

先日、後輩に馬の直腸検査を教えている最中に、「再現性」という言葉がでてきたので、「再現性」について記しておこうと思いました。 獣医療は勝ち負けではないですが、簡単に言えば、必勝パターンを持つことです。 この状況が揃えば、この流れであれば、限…

基本のレベルを高める(直腸検査)

この1か月、もうすぐ2年目になる後輩が馬の直腸検査を習得したい、ということで朝一緒に馬の牧場に往診に向かっています。彼は、朝寝坊せず、10分前には着いて準備しています。休みの日も朝だけは直腸検査をしにくる、という意気込み。 3月中に、子宮と卵巣…

PGF2αの投与は、CIDRを抜く日?抜く前日?

CIDRを抜くと同時にPGF2αを投与すべきなのか、抜く前日にPGF2αを投与するべきなのかについて少し考える機会がありましたので、自分の調べられる限りでまとめてみました。 牛の排卵同期化(Synchronization of ovulation)・定時人工授精(Timed artificial i…

勉強・研究するための文献の探し方

前回は、論文作成中の考察の書き方について、過去の文献を調べ、「どこが同じなのか、どこが違うのか、どこが新しい点なのか」をストーリーの形にして考察を組み立てることの重要性を説明しました。そのため、文献を調べられる限り調べることが必須になると…

受胎率向上のための改良定時授精プログラム(文献紹介)

CIDRを用いた定時授精プログラムには、大きく分けて二つの考え方があります。 今回ご紹介する2022年に発表されたこの文献は、ホルスタイン搾乳牛において、その2つを合体させた内容です。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov いきなり結論です! CIDR挿入時におけるEB…

人工授精時の排卵促進剤は、受胎率を高めることができるのか?

自然発情時の人工授精時に、排卵促進剤を追加で投与されていますか? 授精現場では昔から良くある話だと思いますが、農家さんから聞かれても自分は本当のところどうなのか、わかりやすく詳しく説明することができませんでした。 「投与した方が受胎率が高く…

ブログアクセス数10000回の感謝

私のブログへのアクセス数が10000回に到達しました! これは本当に、日々お忙しいにもかかわらず、時間を割いて読んでくださっている読者の皆様のおかげです。 感謝感激です!!!ありがとうございます!!! daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com 2021年1…

PGF2αとエストラジオールを用いた定時人工授精の文献紹介

ホルモン剤を用いて人工授精をほぼ100%行う方法として、以前にPG → 24時間後PG → 約32から34時間後(次の日の夕方)GnRH →16-20時間後定時授精、のショートシンク法を紹介しました。 daisaku-nosai-hokkaido.hatenablog.com 今日は、PGからのショートシンク…

発情周期のステージ推測⑤(最終回) 総合的に判断する

発情周期のステージ推測のシリーズは今回が最後になります。 農家さんへの聴き取り、牛の状態、直腸検査、エコー検査、膣検査などの様々な情報をし収集し、それらを“総合的”に考察することが大切です。 1つのや2つの項目だけで判断するよりも、多くの項目か…

発情周期のステージ推測④ 超音波検査を用いて黄体の変化を診る

昨日に引き続き、’’超音波検査’’を用いた発情周期のステージ予測における考え方について説明します。 昨日は、①卵胞ウェーブと子宮所見から診る発情ステージの推測法、についてでしたが、今日は、②黄体から診る発情ステージの推測法について勉強していきたい…

発情周期のステージ推測③ 超音波検査を用いて卵胞ウェーブと子宮を診る

今日からは、’’超音波検査’’を用いた発情周期のステージ予測における考え方に焦点を当て勉強していきたいと思います。 ①卵胞ウェーブと子宮所見から診る発情ステージの推測法 ②黄体から診る発情ステージの推測法 がありますが、今日は➀についてです。 ➀のキ…

発情周期のステージ推測② 問診、視診、触診の概要

今日は、発情周期のステージを推測する実際の方法について、どういうポイントを聴き、診ているのかについて、臨床現場で自分が行っている内容を簡単に整理してみました。 農家さんの発情観察による前回の発情日 前回の発情後出血日 前回の人工授精日 前回の…

発情周期のステージ推測①  なぜ、発情周期のステージを推測する力が必要なのか

以前にまとめた、「発情周期のステージを推測するための方法」をアップデートしました。今回から複数回に分けて読者の方々と勉強していけたらなと思います。ご意見や疑問等ございましたら、是非一言いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。 初回は…

第2卵胞ウェーブ開始時の卵巣所見

発情周期のステージを推測する方法について現在記事をまとめ中で、提出期限がもう目の前にきて焦っている最中です。 今回その記事のために、繁殖検診時にわかりやすい所見があれば画像をとるようにしました。 その中で、発情10-11日目、つまり第2卵胞ウェー…

未経産牛に対するPGF2αの2回投与の効果

馬の繁殖シーズンが終わり、やっとこさ早朝の勉強時間を確保できるようになりました。 今回の文献紹介ですが、いきなり結論です! 未経産牛への発情7日目でのPG投与による発情誘起は、連続2回投与が良い。 教科書にも載っているし、昔から良く行われている発…

最新論文タイトル紹介(2022年1月号)

自分がちょっとだけ自分の強みだと感じている分野である牛の繁殖や栄養、子牛について自分が興味をもった最新の論文のタイトルを日本語で紹介させていただいています。少しでも日々の診療の参考にしていただければ幸いです。全て英語ですが、全文読めるのも…

ビタミンA欠乏と大腸菌性下痢症の関係

わかってはいましたが、馬の繁殖シーズンが始まると、がらりと生活リズムが変わり、如何に睡眠をとるかばかり考えてしまい、なかなか調べたり書いたりする時間がとれず、久しぶりの記事です。 今回は、「ビタミンA」について考える機会がありました。 黒毛…

発情周期のステージを推測するには(今日は排卵して何日目?)

「授精しなければ妊娠しない」 分娩後これから授精に向かいたい牛、分娩後日数がたっても発情が来ない牛、妊娠鑑定で陰性だった牛、これらの牛たちを授精に向かうために、獣医師はいろいろ考えると思います。 繁殖管理に対する、獣医師の思想、牛群の規模や…

新しい卵胞波はいつごろ出現するか?(EB-CIDR編)

CIDRと安息香酸エストラジオール(EB)製剤を併用した排卵同期化プログラムにおいて、「新しい卵胞波がいつごろ出現するのか」は、自分も気になるし、このプログラムを利用されている方々の気になるところなのではと思います。 自分が調べる限り、次の3つが…

PG-PG-GnRH ショートシンク法

これまで、排卵同期化プログラムについて、①と②について説明させていただきました。今回は、PGF2α(以下PG)とGnRHを利用してより短期間で授精に向かうことができる③について、自分が後輩に教えることが出来る程度にまとめてみました。 CIDRとエストラジオー…

オブシンクで高い受胎率を得るために

オブシンクが開発されて27年経過しますが、「高い受胎率を得るために」、世界中で様々なアイデア、試験が報告されています。 乳牛での利用が多いので、乳牛に関するこれまでの文献を参考に、自分が後輩に教えられる程度にまとめてみました。 報告されている…

オブシンクの理論

世の中に排卵同期化プログラムは色々あり変法もでていますが、自分の知る限り日本で主軸となっているのはこの3つではないかと思います。 CIDRとエストラジオールを併用したプログラム オブシンク PG-GnRHショートシンク 前回は①を説明させていただきました。…

CIDRと安息香酸エストラジオールを使った発情同期化の理論

牛の飼養管理や栄養状態を改善し、自然発情がしっかり来て、それによる人工授精という流れが最も大事であることは確かだと自分は思います。しかし、発情が来ない・妊娠しない牛に対する薬剤を使った繁殖管理が、現時点ではまだ重要な役割を果たしていること…