だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

診療をまかせるにあたって

後輩に仕事を引き継ぐ場合、特に半年から1年ほど経過して往診随行期間が終わり独り立ちした新人獣医師に仕事を引き継ぐ場合、自分が注意している点があります。

下痢の子牛を引き継ぐ場合、

例えば、「ペニシリン投与しているからペニシリンの継続お願いします。もし、状態が悪化していたら点滴お願いします。点滴の内容は、生理食塩水〇リットル、重曹〇リットル、アリナミン◯ミリリットルを併用してください」はしないようにしています。

ペニシリン投与しているから状態に悪化が認められないと判断したらペニシリンの継続お願いします。もし、状態が悪化していたら点滴お願いします。点滴内容は状態に応じて決めてください」という風に引き継いでいます。

この違いは、新人本人にも決めさせている点を入れていることです。

自分は、これまで多くの牛をだめにしてしまい、特に最初の2年ほどは一部から死神とも呼ばれていました。その影響で、牛をだめにしてしまう治療の流れはある程度自分の中で持つことが出来るようになりましたが、かといって経験を積んできた今現在の自分の治療が絶対に正しいという訳ではないことも理解しているつもりです。なので、これをやったら牛をだめにしてしまう、農家さんと牛に迷惑をかけてしまう治療内容を新人獣医師に伝え続け、それに該当しない治療方法なら大きな差がない(もしかしたより良い方法であるかもしれません)と思い、ある程度新人自身に診断と治療内容に関して選択する幅をもたせ、新人自身で決めてもらうようにしています。

入社したばかりの新人は、ただ指示を待つだけで、その通り動くことでモチベーションが保てそれが会社への貢献でしたが、ある程度経験を積んできた新人獣医師は、自分で考えて決めたいという心が芽生えてきます。

「依存」から「自立」へのステップを踏んでいる時期であることを自分たち先輩獣医師が理解することが大切で、全て指示するという行動は自分はやりすぎではないかと思います。自立は、子供のイヤイヤ期と似ていると思います。

診療分野の中には、まだ指示が必要な分野もありますが、新人獣医師の状況を観察し、この分野だったら指示ではなく、新人自身にも意見を聴き、新人自身にも診断や治療を決めさせていく時期だと感じたら、その機会をたくさん与え、新人自身で「育つ」環境を与えることが自分たちには重要なことかなと自分は思います。責任も、自分で決める行動を続けることによって養っていけると思います。

正しいかどうかはわかりませんが、「育てる」のではなく、「育つ環境・機会を与える」ことが、大事なのではないかと自分は思います。そして、それが今の自分の役割でもあります。自分と同じような境遇にいる中堅獣医師の先生方に、少しでも参考になれば幸いです。