だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

目的と手段

Twitterプロフィール画像と背景を何にしようかとしばらく考えて、決まりました。

「博士号証明書」と「研究の原点」にしました。

①博士号証明書について

大学院に社会人入学した目的は、博士号取得が目的ではなく、博士号取得は目的を叶えるための手段でした。NOSAI獣医師である自分が博士号を取ることによって、研究を続けたいと考えているNOSAIの後輩や学生のための、微力ではありますが道作りとしての大学とNOSAIの橋渡しをすることで、NOSAI獣医師でも研究が深められる環境を作り、もっと産業動物獣医療を活性化し魅力ある産業にしたいことが入学する目的でした。自分に甘いところが頻繁にあるので、証明書をいつも見えるようにし、博士号を取得させていただいた周りの方々への感謝とそれに対する責任として、この目的に向かってやれることを続けていきたいと思います。

②研究の原点

自分も含め臨床獣医師は、生産農家さんから次の言葉で、繁殖の診療依頼をうけることが多いです。それは「牛が発情をみせないんだ」です。そのため、臨床獣医師は、その牛に人工授精が行えるように、PGなどを用いた発情同期プロトコルを用いて発情を誘起する治療を行います。これは、牛の繁殖臨床現場では最も多い光景です。その治療の中で、特にCIDR(イージーブリードなど)を用いた発情同期化処置を行えば、ほぼ100%人工授精が行え、農家さんの生の声である「牛が発情をみせないんだ」、に十分対応できます。非常に便利で、そこそこ受胎率も悪くないのでこれはいいなぁと新人の頃の自分は頻繁に使用しました。

続けていたある時、授精師さんから、「発情はきているけど良い卵がなかったよ」と教えていただく機会がありました。にもかかわらず、「どこかにあると思うのですけど」と、情けない話そのような対応を自分はしていました。しかし、自然発情で人工授精した場合の受胎率70%の地区で、受胎率が50~60%の15年ほど前のCIDR同期化プログラムでは、「自然に来るのをもう少し待った方いいのでは」と指摘を受け、当時の自分は確かにそうだなと反省しました。ここでやっととても大事なことに気づかされました。

それは、

農家さんが心の中で本当に望んでいることは、牛が『妊娠する』ことではないかということです。CIDRなどの発情同期化プロトコルにより授精まではほぼ100%もっていけますが、授精はあくまで妊娠するための「手段」です。「妊娠」が本当の目的であることを勘違いしてはいけないと気づく機会を授精師さんや農家さんから与えていただき、妊娠するためにはどうすればいいかを思い始めたのがきっかけでした。

しかしながら、授精しなければ何も始まらないのは間違いないです。

「授精が遅れずに早くできること」と「受胎率」の両輪がそろって始めて、牛の繁殖に貢献できると自分は思います。

 

手段が目的にならないように、自分も気を付け、後輩にも伝えていきたいと思います。