子牛の下痢の中でも、クリプトスポリジムによる下痢は脱水が強くて速く、非常にやっかいで、悩んでいらっしゃる生産者の方がいると思います。しかしながら細菌やウイルスと違い、クリプトスポリジウムに対するワクチンやクリプトそのものを倒す治療薬(細菌なら抗生物質)はないのが悲しいですが現実です。
そのため、感染するリスク、または感染しても発症するリスクを減らすことができれば、つまり予防するにはどうすればいいのかが大事になると思います。
その対策を考えるにあたり、そもそも何がリスクになるのかを、科学的に現時点で報告されている内容を検討したのがこのレビュー論文(2020年)です。
色々なリスクが検討されていましたが、自分が診療時に話したり対応することができることと考えると、以下のことが論文の中身から勉強になりました。
①他の子牛とより多く直接接触できる環境はリスクが高い
②群れの頭数が多いほどリスクが高い
③硬い床(コンクリート)は土の床に比べリスクが低い(きれいになりやすいため)
④敷料の種類は関係ない可能性
⑤出生後、親と一緒に何日いるかによるリスクの評価では、結果が様々
⑥初乳と感染リスクの評価では、結果が様々
⑦初乳の給与方法(母牛の授乳、哺乳瓶、チューブ、ではリスクの差がみられない
特に①と②は釈迦に説法と存じますが、科学的にも証拠が一貫しているポイントと示されています。
論文では、生後6週未満の若い子牛が、クリプトスポリジウムに感染し、そしてそれを広げるリスクが最も高いと記述されています。なので、上記を意識して、この時期の管理を今一度考えるため、農家さんの現状を把握し、改善点が見つかれば見直してみようと思いました。