だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

「新入社員への仕事の教え方」のセミナーに参加

新人獣医師の育成(On The Job Training)は様々な組織で行われていますが、私もどのように行えばよいのか悩み中でありそれを勉強したくてセミナーに参加しました。

その中で勉強になったことをやや長文になってしまい申し訳ございませんが、自分も頭を整理したいので、いつでも見れるように文章にして頭に入れようと思います。

セミナーの内容についてです。

数社が参加したセミナーで、その方々の多くが、「1年目よりも2~3年目で離職する社員が多い」とのことでした。その理由については、多くの離職者は本音を語らず辞める人が多いとのことです。講師の先生は「1年目はOJTが充実していても、2年目になると新たな新入社員のOJTが開始されるため、2年目の社員はOJTがトーンダウンしてしまうことが多い。実は、そのトーンダウンにストレスを感じる人が多い。なので新人は3年かけて育成するように心がける必要がある」と経験上感じているとのことです。なので、中長期的な関わりになるため、育成担当者(OJT担当者)だけでなく、診療所全員が関心を持って新人育成に関わっていくこと、育成担当者は新人獣医師の日々の状況を周囲と共有することが非常に大事になるとのことです。育成担当者がつぶれないように、新人はお荷物ではなく、「組合全体の財産」という気持ちで診療所全員が関わるような仕組み(ミーティング等、まめな情報共有)、雰囲気を診療所内で作ることが大事とのことです。

また、OJTとはどのような教育でしょうか?

定義としては、「日常業務の中で仕事を通じて、意図的、計画的に働きかける指導や教育」とされているため、いきあたりばったりの教育ではできない、とのことです。

そもそも、新人獣医師の育成指導の目的は何なのでしょうか?

狭義的には、「新人獣医師に仕事を覚えさせるため」ですが、本当のゴールは、新人獣医師の自己有用感(私、役に立っている!)を高め、「この職場にい続ける意味がある」「この職場で必要とされている」という実感をもたせること、とのことです。

そのためには、新人獣医師とのコミュニケーション、信頼関係構築が非常に重要になり、これがなければどのような方法を使っても育成の効果は表れにくいとのことです。

では、どうすれば信頼関係を構築できるのでしょうか?これについては、「こんな上司・教育指導者には教わりたくない」というテーマで参加者全員で情報を出し合いました。それをまとめたところ、結局はその反対の行動をすることが大事となりました。

その行動の代表的なものが、

1. 礼儀礼節をわきまえた行動、身だしなみ

2. 新人獣医師の仕事と成果への関心

3. 自身および新人獣医師の役割の理解

4. こまめな情報共有

5. 前向き・建設的な言動

6. 仕事に対する目的・目標意識のある言動

7. 周りに対する敬意、尊重、配慮

8. 傾聴・共感するコミュニケーション

9. 良い事は互いに称え合う

10. ダメなことはダメという

です。

これらは、意識し訓練することで徐々にできるようになれば良いですが、まず土台になるところが傾聴とのことです。共感、オウム返し、要約、伝え返しなどは基本中の基本で、この程度は筋肉注射するぐらい当然できるように普段から意識して訓練しておくことが大事です。みな筋肉注射も最初はできなかったのですから、意識し訓練すれば傾聴もできるようになると私も自分に言い聞かせています。

実際に新人獣医師に仕事を「教える」ことになった場合、大事な5-ステップがあります。

1. 教える準備をする

2. 丁寧に仕事の説明をする

3. 丁寧にやってみせる

4. やらせてみる

5. フィードバック

特に重要なのが1の準備です。

新人獣医師の知識、経験知をまずは把握することで、どの程度教えれば良いのかを調整するとのことです。さらにここで最も重要なのが、その仕事の目的・意義、重要性、影響、習得のメリット、を伝えることとのことです。意義については、自分で言葉で説明できるようにしておくことが大事です。意義が仕事のやりがいの動機付けになります。やりがいはいずれ新人獣医師本人が自分で作っていくものですが、まずは先輩が1つの仕事が最終的に何に繋がっているのかを新人獣医師に伝え理解してもらうことです。また、教える時には、程度言葉(ちゃんと、きっちり、なるべく、意識しろetc)は使わず、数値として継続できるように説明すること、具体的にかみ砕いて伝わる説明をすることが大事です。

 

新人獣医師を大切にする、心理的に安心感を与えることが非常に重要とのことです。なので、「Z世代が」とか「今の新人は」とかは言わずに、人との関わり方を今の時代に合うように、私自身もアップデートすることに気づかされました。しかしながら原理原則を伝えることは非常に重要です。その上で、自分や自社の常識は全世界共通のルールではないと肝に銘じること、とのことです。

安心感を与えるために重要なのが、承認です。

このスキル向上のコツは、観察力とのことです。これはグサッときました。私は観察力が本当に足りていないからです・・・。

観察し、新人獣医師の良さ・持ち味を見出すネタをまずは作ることです。そのためには、フレーミングのスキルが必要になるとのことです。私は初めてリフレーミングという言葉を知り非常に勉強になりました。

フレーミングとは、「気持ちが上向く、見方が変わるような言葉に変換しての言葉がけ」をいいます。新人獣医師がネガティヴな状況、出来事、言葉、感情、を持った場合、まずは受容し共感しますが、その後、リフレーミングを行い、ほめてあげるネタに変えていきます。そのネタを見出し、それを引き出し、本人に伝えることで承認ができます。このリフレーミングを繰り返すことでスキルは向上し、承認力がアップしていきます。やっぱり、獣医療技術もそうですが、このようなスキルも習慣、訓練、なんだなと思いました。

しかしながら、いつも励ましているばかりではありません。

仲良し軍団だけでは組織も個人も成長が難しいです。指摘・注意するために叱ることが大切です。

次に、指摘・注意することと、その仕方について説明します。

注意したらパワハラになるのでは、そうなったら自分がここに居られなくなる、また注意したら新人獣医師は嫌になって辞めるのでは、注意は注意する側もパワーをすごく使い疲れる、などで注意・指摘することを躊躇する先輩獣医師も多いです。しかし、後輩が好ましくない言動をした場合は、迷うことなく即時に指摘・注意しなければならないとのことです。指摘・注意が必要な場面とは、以下の3つとのことです。

1. 真摯に取り組まない

2. 約束、ルール違反、組織風土を乱す行動

3. 周囲の迷惑を考えず行動した場合

そしてさらに大事なのが、どの程度まできたら指摘・注意するのか、その基準です。育成担当者の個人的な好き嫌いや価値観を基準にしてはいけないとのことです。

基準にするのは、組織としての価値判断基準に反していないかどうかです。これは、企業理念診療所の理念・文化・考え方・行動理念です。

次に、指摘・注意するステップについてです。

1. 本当に指摘・注意する必要性があるのか再度検討すること

2. 事実を新人獣医師に確認すること

3. 本人の言い分や認識を確認する

4. その言動の影響を具体的に伝える(社会人として・・・は使わない)

5. 正しい言動とはどのようなものか、行動をただす理由を伝える

6. 期待とサポートの意志を伝える

7. 指摘・注意するのは、行動修正が目的のため、理解できているか最後に聞く

もし、理解できていなければしつこくでも聞く。

しかしながら、このステップがなかなか難しい場合も多々あります。そのため、何を伝えた、そしてできたか、その記録をデータで残しておき、診療所皆で考えるときに資料としてその記録した情報を利用するのが良いとのことです。

 

ここまでは、教育担当者(OJT担当者や診療所全職員)側の心構え、マインドセットについてでしたが、これだけでは新人獣医師育成は上手くいかないとのことです。育成する側だけでなく、新人獣医師に対しても早い段階から定期的・継続的な心構え、マインドセットを行うことが非常に重要です。

また、新人獣医師を大切にする=甘やかす、ではないとのことです。

特に、仕事の対価については絶対に伝える必要があると先生は話されました。いくら認めてほしい、共感してほしい、と思っても私たち獣医師はプロである以上、結果を蓄積できなければ認められないのは当然であることです。自分の存在価値や働き甲斐は人から与えられるものではなく自分自身で見出しつかみ取るもの、セルフコントロール、このような心構えを身に着ける必要があるため伝える必要があります。

最初だけでなく、定期的、継続的に心構えを新人獣医師に伝える仕組みを組織や各診療所で作ることが非常に重要と思いました。

つまり、お互いで、新年度が始まり新人を含めた診療所全員で「教える・教わる」について話し合い、勉強し、皆で訓練して習慣化していくこと、それができる仕組み、雰囲気をつくることが大事になる、感じました。

このセミナーの内容が絶対ではないですが、私は気づかされることが満載で、非常に勉強になりました。

私と同じように新人育成でお悩みの先生方に少しでも参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。