本年度も、日本繁殖生物学会に参加させていただきました。昨年まで手ぶらで参加していましたので、今回こそはと決め7月に発表を申し込み、無事??に本日研究発表を終えました。
今年の参加動機として、「引き続き、研究者の思考を知りたい、日本における繁殖基礎研究の現況を知りたい、また本年度は所属機関における取り組みを発表することで、研究者の方々に大動物臨床獣医師のことを知っていただきたい、また研究者からの意見や指摘を頂戴したい、」という思いで参加させていただきました。
私の演題タイトルとしましては、
「繁殖検診育成チームとして取り組んだ、牛のPGF2α投与後の人工授精における繁殖成績の変化について」です。大動物臨床獣医師が使用する機会が特に多いPGF2αからの人工授精について、最新獣医療や高度獣医療でもなんでもないですが、今一度皆で見つめなおして取り組んだらこんな感じに改善また課題が見つかりました、という内容です。詳しい内容は、またの機会でできればと思っています・・・。
本学会の特徴としましては、臨床研究発表は1/10くらいであり、ほぼ研究者の先生方の集まりになります。発表が10分、質疑応答が5分と、1研究発表に対する意見交換が十分にされるという特徴もあります。そのため、私も結果のまとめ方等についてご指摘をいただきました。その内容の一つとして、PGF2αでの授精において、2回目以降の場合、前回授精からの日数・間隔やその間に起きたイベントなどにより、PGF2αでの受胎率に差があるのかどうかでした。前回が自然発情なのかホルモン剤での授精なのか、も調査できれば、発情周期のステージ推測だけではなく、よりPGF2αで結果がでやすい対象牛を検討できるのではとのことです。検診業務として関わっている以上、人の方で管理できることがあればそれは突き詰め理解しておくことは大事だと、と改めて気づかせていただきました。
以下では、印象に残った研究発表について説明します。
➀OR1-3 ラット視床下部において摂食や生殖を仲介するGPCRシグナリングの探索(名古屋大院)
視床下部下垂体の上位に位置する弓状核に存在するキスペプチンニューロンは第一義的に繁殖を制御するが、それには同部位に局在する摂食を制御促進するニューロンの間接的な抑制が関与していることとのことです。食と繁殖について、牛でも無視できない話なので、どうなのかと興味深い内容でした。
➁OR1-5 雌ラットの前腹側室周囲核Kiss1発現を制御するエストロジェン受容体α転写共役因子の探索(名古屋大院)
視床下部下垂体にE2のフィードバックが来て、GnRH→LHサージという流れを理解していましたが、E2受容体を経由してキスペプチンニューロンでのKiss1が発現しGmRH→LHサージを発生させている可能性があるとのことです。
➂OR1-6 メスラット視床下部・辺縁系領域におけるニューロペプチドB受容体発現細胞の神経ペプチド共発現に対するエストロゲンの影響(日獣院)
E2の作用は、いきなりKissペプチンニューロン活性化ではなく、抑制性ニューロンであるDynorphiAを介してKissニューロンへの抑制性入力を解除することで、Kissニューロンを活性化させる、ということです。
➃OR1-30 黄体形成ホルモン(LH)簡易検査イムノクロマトキットによる黒毛和種牛のLHサージ検出及びその後の受胎性について(農研機構畜産研究部門)
現場で測定が可能なLH検出キットについて、全血で15分の検査でH濃度の検出が可能。継続してみることで、排卵時間の予測が可能とのこと。しかし、バンドの色で判断するため、その牛にとって最大がどこなのかを知る上では、使い勝手が難しいと感じました。ですが、個人的には卵胞嚢腫牛などでなぜ排卵しないのか、不受胎の要因を調べる中で排卵遅延を疑った場合などの検査・診断に可能性を感じました。
⑤OR1-33 Heat Stress modulatesEpidermal Growth Factor(EGF) production and Toll-like receptor(TLR4) expression in bovine endometrial cells(北大)
LPSがTLR4に補足され免疫反応が起き、卵胞発育や性ステロイドホルモン産生へ悪影響を与えることは理解していましたが、ヒートストレスはLPSを介さずにTLR4発現を変化させEGF産生に影響を与えるということでした。TLR4は繁殖への影響が強いレセプターなので、もっと理解しておくことで、なぜ卵胞は発育しないのか、排卵しないのか、黄体が作れないのか、子宮疾患が治らないのか等の対応に繋げることができるかもと思いました。
⑥OR2-41 黒毛和種繁殖牛の発情同期化処置において卵胞波リセット後に発現する1卵胞波および2卵胞波パターンとその要因解析(大阪公立大)
黒毛和種においてE2-CIDRのプログラムを実施した場合、卵胞波が2~5日に1つ出現してそのまま排卵に向かう牛と、2~3日に一度卵胞波が出現してそのまま伸びるのではなく4日ほどと非常に早く閉鎖し、6~7日に二つ目の卵胞波が出現しそのまま排卵に向かうという非常に興味深い内容でした。さらにE2やP4濃度との関連性も調べられていました。2卵胞波が出現する機序としては、➀処置開始前後の血中P4濃度低値、➁早期の第1卵胞波発現、➂第1卵胞波の主席卵胞選抜時期における血中E2濃度高値による卵胞発育抑制と閉鎖、➃第2卵胞波の発現、ということが考えられるとのことです。自分自身が研究していた内容でもあったので、より原理に対して理解が深まりました。臨床獣医師が知る価値が非常に高い内容でした。