今日は、発情周期のステージを推測する実際の方法について、どういうポイントを聴き、診ているのかについて、臨床現場で自分が行っている内容を簡単に整理してみました。
- 農家さんの発情観察による前回の発情日
- 前回の発情後出血日
- 前回の人工授精日
- 前回の繁殖検診所見
- 当日の発情兆候
- 外陰部の腫脹、充血、粘液
- 直腸・エコー検査による子宮・子宮頚管の触感、内膜の浮腫、輝度、内膜と筋層の厚さの差、粘液貯留、血管層
- 直腸・エコー検査による卵胞の数、大きさ、触感、並び
- 直腸・エコー検査による黄体の大きさ、触感、輝度、内腔
- 膣鏡による子宮外口の弛緩、充血、粘液
他にも方法があると思いますが、自分はこれらの項目から、「総合的」に判断しています。諸先生方に相談しましたが、数個の項目だけで推測するのではなく、「総合的」に判断することが発情ステージの推測にとって非常に大切であることを教えていただきました。
農家さんへの聴き取りの中で、発情後出血は大事な所見です。発情後出血は教科書にも2~3日が多いと記述されています。また、発情2日後が最も多く、発情が確認された牛の61%であったと報告されています2)。
直腸検査前には外陰部の所見を取ります。様々な教科書にも記載されています。排卵96時間前からの所見ですが、約72時間前から外陰部の充血や浮腫が出始める傾向があります3)。つまりその所見が確認されると発情が近づいた可能性が高いことが1つの情報として手に入れられます。
次回は、本講座のメインテーマである、“超音波検査”を用いた発情周期のステージ推測における考え方に焦点を当てて勉強していきたいと思います。
参考文献
- 古山敬祐、小山毅、松井義貴 : ホルスタイン種経産牛における発情後出血の見られる時期及び人工授精後の受胎率との関連, 繁殖技術, 33, 67-69(2014)
- Sumiyoshi T, Tanaka T, Kamomae H : Relationships Between the Appearances and Changes of Estrous Signs and the Estradiol-17β Peak, Luteinizing Hormone Surge and Ovulation During the Periovulatory Period in Lactating Dairy Cows Kept in Tie-stalls, J Reprod Dev, 60, 106-114(2014)