だいさく NOSAI獣医日記

強みをみつけ、チャレンジを与えられる獣医でありたい

「時間」と「お金」を何に投資しますか?

最近、老後の資金を考える機会があり、投資について改めて見直すことがありました。

今回は、そのような株や債券などに対する投資ではなく、ローリスクにもかかわらずハイリターンである夢のような投資である「自己投資」について自分が考えることをまとめてみました。

 

「自己投資」とはなんでしょうか?

自己投資とは、自分の「時間」と「お金」を自分のさらなる成長のために使うこと、だと自分は考えます。

にもかかわらず、自分は、「時間」と「お金」の両方をパチンコ・スロットに注ぎ込むという大学生から続く生活を辞められず、ずーと続けていました。そのため、これに気づくのに、獣医師として社会で働き始めてから5年ほどかかりました。

自分が自己投資の大切さに気づくまで5年という長い年月かかってしまった失敗を、これからの若い獣医師の先生方に知ってもらうことで、自己投資の重要性に早めに気づいてもらい、自分とは違う他の失敗を経験して、どんどん失敗を次の世代に繋げて活かしてもらいたいと思います。

でも、そもそも産業動物獣医師にとって「自己投資」がなぜ大事なのでしょうか。

意識高い系だけの人間がやっていればいいのでは、と思われる方もいらっしゃると思いますが、そこまで意識高い系でなくても大事なんじゃないかと自分は考えます。

その理由は、産業動物臨床獣医師「社会的役割」です。

産業動物臨床獣医師として社会の中で働いている以上、その社会的役割を果たすことは必須です。そしてその役割は、「農家の問題解決」に尽きるのではと自分は考えます。

農家の問題解決のために動き始め、その動いている過程自体は確かに素晴らしいです。しかしながら、動くだけでは不十分で、問題が解決されたという「結果」を出さないと社会的役割を本当に果たせているとは言い難いと自分は考えます。

それゆえ、その結果を出すための手段として、自己投資が大事であると自分は考えます。これは、7つの習慣の中の第7の習慣である「刃を研ぐ」が非常に参考になると思います。刃を研ぐことは、「成果」を生み出すその人自身の能力を高めることであり、「自分の人生に対してできる最大の投資である」、ということをスティーブン・R・コヴィー先生も7つの習慣で述べられていました。

個人でやろうと思えばできる(影響を与えることができる)のは、具体的には以下の3つであることが述べられています。

①肉体的側面(体):元気・健康でいるためのへの投資

②精神的側面(心):精神を良い状態でいるための投資

③知的側面(技):知性や知識を広め深めるための勉強への投資

今思えば、パチンコやスロットをやっていたのは②への投資だったかもと思っちゃっています(笑)。まっやり切った分、今はもういいかなと(笑)。でももったいない時間の使い方をしていたなぁと少し後悔しているの事実です。②ばっかりで、その分①や③が疎かになっていました。

現在、自分の中で最も大切にしているのは、やはり①です。元気・健康でなければ、心にも余裕がなく、言動が感情的・反応的になってしまいます。そうなると、農家さんや同僚を理解しようとする気持ちが低くなり、相手に対する対応が良いとはいえず、コミュニケーションが上手くいかない自分がいます。自分はこのような経験をするたびに、体の調子を整えることの大事さを痛感し、反省を繰り返しています。

精神的側面の②に投資することで、その人が人生において大事にしている考え方や価値観に向かって、その人自身を繋いでくれる源となるものを引き出す力を養うことができます。なので、方法は人それぞれですが、自分の精神が気持ちよくなり、安定するような行動にお金や、特に「時間」を投資することは必要なことです。

自己投資を何に、どの程度、どのように行うのかは、皆それぞれだと思いますし、何が良いかとか正解はその人次第であると自分は思います。

自分たちは獣医師である前に一人の人間であり、家族との時間や自分の趣味を最も大切にし一杯楽しむことは非常に大事で、自分もそこを最も大事にしています。

しかし、臨床獣医師として農家の問題解決を行う能力を高めるにあたっては、①②の上にさらに③が必要で大切だと自分は考えます。知らなかったり、より良い方法があるかもなど疑問に感じたら、獣医師に聴いたり、教科書を読んだり、講習会に行ったり、今ならオンライン講座が数多く開催されています。また、そのような疑問や新しいことを創造することに対して、関連する大量の論文を新しい順に読み今現在どこまで調べられているのか、今はどのあたりがトレンドなのかを勉強することは、今後の自分の知識と技術に「幅と深み」を持たせることができると自分は思います。そのために「時間」と「お金」を投資する必要があります。教科書を買うお金は必要で、新人時代は給料も安いので、手が出しにくい気持ちもわかりますが可能な限り参考となる教科書を購入し、また論文は嬉しいことに結構無料で見ることができます。本当に必要であれば1本3000円前後ですので購入すればいいと思います。

「勉強」で知って理解でき、実践できる程度であれば、それで農家の問題を解決でき、臨床獣医師としての役割を果たすことができます。しかしながら、いくら「勉強」しても現時点の獣医療ではまだ不明な病気、今の時代に合ったより良い方法の創出、また農家の悩みや希望に応えられないことが実際の臨床現場には数多く存在するのは多くの臨床獣医師が感じていると思います。この時に、臨床獣医師が行う「研究」が始まると私は考えます。実際私自身の「牛の繁殖関連の研究」もそのような状況を打破したい思いから始まり、研究7年目に入ったところで大学院に進学し、「時間」と「お金」をさらに投資しました。特にお金は5年で350万程度かかったと思います。正直この投資はかなり家計を圧迫させましたが、なんとか家族皆で乗り切ることができました。とにかく「時間」を投資し、博士論文を完成するにあたって研究11年間で読んだ繁殖関連論文数は数えてみたら393本でした。これが多いか少ないかは別として、学ぶことが目的ではなく、学んで診療に活かし、世の中の繁殖管理の役に立てる情報を提供するというOutputすることが根底にありました。OutputするためにはInputとしてこの程度の量の論文を読み続け考察することで頭を整理する必要が、繁殖分野の世界を全然知らなかった自分の力量的には必要でした。

このように、一つの分野だけでも深く追求することで、より「農家の問題解決」をする力を高められる可能性があると自分は考えます。しかし勉強・研究したことがすぐに発揮できるとは限りません。役に立つのは数年後かもしれません。しかしながら、「やり抜く」ことで、小さいながらも結果が出始め、自分自身も満足感と存在価値をさらに感じることができ、その結果自己肯定力が高まり、日々の生活が充実していくという良い流れが生まれると自分は思います。

今回は、自己投資について、自分なりの考えをまとめさせていただきました。最後までお読みいただきありがとうございます。考え方は人それぞれですが、今現在の自分や今後の自分に対して悩んでいる方、特に若い獣医師の先生方の参考になれば幸いです。

最後にこの言葉を残したいと思います。

自分の「時間」と「お金」を何に投資しますか?