「クリプトスポリジウムによる下痢症と診断した子牛に対して、抗生物質を投与するかしないか」は、長きにわたり臨床現場の獣医師の間でも見解が様々だと思います。
そのため、時間を惜しまず、丁寧に糞便塗抹をして糞便中の細菌の状況を調べている熱心な先生方もいらっしゃいます(本当に感服です)。
今回、このような状況に対する一つの考え方を勉強できる論文(2019年)を紹介させていただきます。
結論から話しますと、
クリプトスポリジウム感染による下痢症の重篤度にフソバクテリウム属菌が関与し、フソバクテリウムの増加は、クリプトスポリジウム感染の重要な悪化因子である可能性があるとのことです。フソバクテリウムは嫌気性のグラム陰性桿菌です。
また、これは特定の農場だけではなく、普遍的な結果でもあったとのことです。
よって、フソバクテリウムを標的とする抗生物質療法が、クリプトスポリジウム感染における下痢の重症度も軽減する可能性があるということも示唆されています。
自分は、農場の特徴と牛の臨床所見から、大腸菌などの細菌性下痢ではなくクリプトによる下痢かなと診断したら、輸液と生菌剤で治療をして、抗生物質の投与はなかなか治らない時に行っていました。
しかし、このようにフゾバクテリウムが腸内細菌叢で優勢になり悪化に関与している可能性が考えられるということを頭に入れて、今後の下痢対策や診断・治療方法を考えていきたいと思いました。